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アカデミック・ライティングの基礎知識

アカデミック・ライティングとは、レポートや卒論、修士・博士論文などを含めた学術的な文章を書くことです。読者が筆者の論理的な主張を正確に理解できるだけでなく、客観的な検証ができるように書かれていなければなりません。そうした文章が書けるかどうかはアカデミック・ライティングの基本を理解しているかにかかってきます。

アカデミック・ライティングのスキルは論文を執筆して出版するために必須ですが、分析的思考、論理的な議論、明確なコミュニケーションにも役立ちます。また、適切な引用や独創的なアイデアに配慮することで研究インテグリティ(研究の健全性・公正性)を高め、研究者自身を成長させるに留まらず、学術の発展にも寄与します。

このブログでは、論文やレポートだけでなく、学会発表などの、さまざまな場面で活用できるアカデミック・ライティングの基本を振り返り、アカデミック・ライティングのスキルを向上させるためのポイントを概説します。

アカデミック・ライティングの基本要素

アカデミック・ライティングには、いくつかの基本要素があり、それらに留意して文章を書かなければなりません。

<アカデミック・ライティングの基本要素>

・明確さ:不要な専門用語を避け、明瞭な表現にする

・客観性:感情的な論調を避ける

・一貫性:信頼できるデータや情報源を利用するとともに、文章全体の構成を整える

基本要素の1つめは明確さです。筆者の考えを読者に分かりやすく伝え、内容を理解してもらうためには、構成と論理の明確さが不可欠です。専門用語の過度な使用を控え、一般的ではない用語を使用する際には定義しておくようにしましょう。

2つめは客観性です。学術論文では、個人的な偏見や感情的な論調を避け、客観的な表現が求められます。論理的な思考に基づく見解を客観的に記すことで、信頼の低下を防ぎ、読者が批判的に内容に関わることができるようにします。

3つめは一貫性です。学術文書に示される論理に一貫性を持たせることで説得力を増すことができます。また、それぞれの段落を論理的につなげ、スムーズにアイデアが理解できるように論旨の流れを整えます。移行句(transition phrase)をうまく使って文脈を整えることで、読者に論旨を伝えると同時に、どのセクションも全体の展開につながるようにします。

アカデミック・ライティングにおける言葉の選択

アカデミック・ライティングにおいて、言葉の選び方は非常に重要です。言葉の選び方次第で、自分の考えが読者にどのように伝わり、解釈されるかが変わってしまいます。しかも、正確な言葉を選ぶだけでなく、言葉をどのような文にし、さらにパラグラフで何を伝え、どう配置するかも判断しなければなりません。複雑な考えを分かりやすく伝えるためには、読者の理解を妨げることのないように注意することが重要です。

アカデミック・ライティングでは口語体やスラングの使用は避けます。カジュアルな言葉遣いではなく、よりフォーマルな言葉遣いをすることで、信頼の持てる内容であることを示し、読者の理解に留まらず、学術界での議論にも繋げることができるでしょう。

明瞭さと簡潔さへの配慮

優れた学術論文には明瞭さと簡潔さが欠かせません。筆者の考えが明確であれば、読者は混乱することなく複雑な考えを理解することができます。繰り返しますが過度な専門用語の使用を控え、使用する場合には必ず定義を付けておきます。

簡潔さを向上させるためのコツは、文章構造をシンプルにしておくことです。文章が間延びしていると伝えたいメッセージが伝わりにくくなります。文章を短めにすることで、読者の興味を引き、心をつかみやすくしましょう。一般的に、一文の英単語数は15個から20個に留めるべきと言われています。

また、簡潔ながら包括的な表現にしておくことも重要なので、注意深く言葉を選ぶ必要があります。議論や分析に何も関係しない不必要な言葉を入れるべきではありません。すべての単語が役割を持ってストーリーを広げ、読者の関心をしっかりと引きつける文章となるように心がけてください。

書式とスタイルガイド

アカデミック・ライティングにおいて、書式を指定のものに合わせることは不可欠です。書式を整えておくことは、読者にプロフェッショナルな印象を与え、論文の信頼性を高めることにつながります。

アカデミック・ライティングにおいては、APA(American Psychological Association、米国心理学会が定めた書式で、主に社会科学分野で広く使われている)、MLA(Modern Language Associationで人文系の論文で多用される)、CMOS/Chicago(正式名称は『シカゴ・マニュアル・オブ・スタイル(The Chicago Manual of Style)』でシカゴ大学出版局から出版されている)といったスタイルが一般的ですが、研究機関や出版社によって使用しているスタイルが異なるので、執筆または投稿前に必ず確認してください。

いずれのスタイルに準ずるとしても、フォントの大きさ、余白、行間など細かい部分にも気を配りましょう。見出しや小見出しの一貫性も非常に重要です。文書の形をきちんと整えることで、読者がコンテンツを読みやすく、かつ探したい情報を見つけやすくすると同時に、論点を伝えやすくすることができます。

学術論文では引用の仕方にも要注意です。他者による論文などから文章を引用することによって、議論をより強固なものにすることができますが、盗用・剽窃に関連する問題を回避するためには、引用であることを明確に示さなければなりません。論文全体を通して適切な引用となるように、適用すべき引用スタイルについて学んでおきましょう。

アカデミック・ライティングに役立つツール

アカデミック・ライティングに適したツールの使い方によっては作業に大きな差が生じるようになってきました。学術的な文章に特化して、文章の作成から校正までのプロセスをサポートしてくれる各種のAIツールも登場しています。特に英語を母国語としない人が英語で論文を書く際、英語力を補うために英文校正ツールなどを活用することは有意義です。AIの飛躍的な進歩により、アカデミック・ライティングや学術コミュニケーションに役立つ支援ツールも多数出てきているので、文章の執筆や編集、校正に役立ててみてください。アカデミック・ライティングに最適な支援ツールを使えば、論文の執筆だけでなく学術コミュニケーションの助けとなることでしょう。

例えば、AI英文校正ツールTrinkaは、学術論文やテクニカルライティングに特化した文章校正ツールです。文法チェックだけでなく、文章の明瞭さと一貫性を高める修正提案も提示してくれます。AIが文脈にそぐわないスペルや表記のミスを調べ、フォーマルで簡潔、かつ魅力的な文章作成をサポートします。

学術研究に適したライティングの支援に留まらず、データ分析を簡素化するAIツールもあり、こうしたツールの登場は研究者にとって大きな助けとなっています。研究者らはそうしたAIツールをワークフローに組み込むことで、複雑な作業の負担を軽減させ、正確性と生産性を高め、さらには研究者が議論とアイデアの構築に集中することができるようになります。ツールによって機能や価格が異なるので、自分にとって使いやすいツールを見つけてください。

アカデミック・ライティングのベストプラクティス

効果的なアカデミック・ライティングは、徹底的なリサーチから始まります。既存の文献に精通し、自分の主張が信頼できる情報源に基づいたものであることを確認しましょう。そうすることで、自分の主張に厚みを持たせ、研究テーマに関して包括的に理解していることを示すことができるのです。

まず、計画を立てることが重要です。執筆に入る前に自分の考えをまとめ、自分の研究全体の論理的な流れを組み立てましょう。各セクションを流れるように繋ぎ、読者を混乱させることなく論点に導くようにします。

全体の流れが決まったらライティングを開始します。「1日に1時間/1000単語は書く」など具体的な日々の目標を定め、とにかく手を動かしましょう。ライターズブロックに悩むことがあれば、信頼できる研究室の仲間に草稿を読んでもらい、率直な意見をもらうことも有効です。博士論文など一生に一度のアカデミック・ライティングにチャレンジする人は、自分の精神衛生を守るプランを用意しておくのも良いでしょう。

推敲と校閲は必須です。新鮮な気持ちで見直せるように、時間をあけて推敲や校閲を行うようにします。明瞭かつ正確な文章にするためにAIツールや専門の校正サービス等を活用し、より魅力的な文章に仕上げましょう。

まとめ

学生や研究者らにとってアカデミック・ライティングは、明確で一貫性があり、信頼性の高い学術コミュニケーションを実現させるために不可欠なスキルです。難しそうに見えますが、基本要素を抑えておけば、アイデアや発見したこと、研究の成果を効果的に読者に伝えることができます。

言葉の選び方、文の構成、トーンなどによって左右される言葉のニュアンスを理解し、適切な選択をすることでインパクトを高めることができます。また、専門用語の使用を避け、分かりやすい言葉で書くことによって、読者の関心を高めることができるでしょう。それぞれの専門分野には独自の基準があるため、指定の書式やガイドラインを遵守することでプロフェッショナルな文章に仕上げ、研究成果を広く知らしめることにつながります。

AIツールを活用することで、見落としたミスを修正し、文章を洗練させることができます。校正後の文章全体を自分でも再読し、さらに研究者仲間やメンターからのフィードバックを踏まえることで、アカデミック・ライティングのスキルをさらに向上させることができるでしょう。論文執筆は困難な作業ですが、執筆を重ねてスキルを高めることは貴重な経験となり、あらゆる学問分野に貢献することにもつながっていくものです。

便利なツールの他に、アカデミック・ライティングに関するさまざまな解説や指南書も出ているので参考にしつつ、練習を重ねてみてください。

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