オンライン英文校正ツール8つを徹底比較!

英語が第一言語でない人にとっては、カジュアルな英作文であっても、フォーマルな文書の作成であっても、文法やスペルのミスなく書き上げるのは簡単ではありません。でも、そんなミスを修正してくれるツールを気軽に使えたら世界が広がりませんか。英語でブログを始めたり、海外アーティストのSNSにコメントしたり、英語でスライド資料を作ったり、英文を躊躇なく書けるようになったら何をしたいでしょう。

オンラインの英文校正ツール、英文チェックツールの精度は近年飛躍的な向上を続けていて、無料で使えるものも出てきました。

現在、利用可能な英文校正ツールにはたくさんの種類があり、どれを選んでよいか分からないという方も少なくないでしょう。使いやすさ、分かりやすさなど、インターフェイスや機能面での違いもありますが、一口に英文校正ツールといっても、それぞれ独自のアルゴリズムを使用しており、ミスの検出精度は一様ではありません。

ここでは、文法やスペルミスのあるサンプル文を使い、2022年時点で利用可能なオンラインツール8つを比較検証しました。各ツールの特徴や有償版の料金体系とあわせて、その強みと弱みを見ていきます。

同じサンプル文を使って各ツールがどこを校正するか検証

Trinka、Grammarly、Ginger、Language Tool、Writefull、ProWriting Aid、Reverso Speller、Hemingway Editorの8つのツールで同じサンプル文を校正してみたところ、検出した結果が下記の通りです。修正箇所は、文法やスペルのミス、類語の反復などの冗長な言い回し、性差別などの偏向のあるニュアンスの言葉などです。

サンプル文

The article was written on 1984(※1). It was about this experiments(※2) that were carried out on some isolated village. The villages (Lulbushki) was(※3) located in a mountaineous(※4) region and well built(※5) yak roamed the pastures. The inhabitants in Lulbushki(※6) depended of the(※7) pastures. On 25st(※8) of Nvember(※9) 1984, some of the yak were rounded up in accordance to(※10) the new animal husbandry law of Peking and(※11) informations about(※12) what would be done was announced. The yak were coloured(※13) white to distinguished(※14) them but it was hard to make out teh(※15) difference. They were terrified and could possibly(※16) have undergone trauma. The yak like to roam freely in nature and do grazing(※17) in pastures with their herdsmen(※18) guarding them. The herdsmen understand how valuable theur(※19) yak are to they(※20). However, they may end up to sell(※21) them.

 

期待する修正箇所(誤 → 正)

※1 「on 1984」→「in 1984」
※2「this experiments」→「these experiments」
※3「The villages (Lulbushki) was」→「The village (Lulbushki) was」
※4「mountaineous」→「mountainous」
※5「well built」→「well-built」
※6「inhabitants in Lulbushki」→「inhabitants of Lulbushki」
※7「depended of the」→「depended on the」
※8「25st」→「25th」
※9「Nvember」→「November」
※10「in accordance to」→「in accordance with」
※11 「law of Peking and」→「law of Peking, and」
※12「informations about」→「information about」
※13「coloured」→「colored」
※14「to distinguished」→「to distinguish」
※15「teh」→「the」
※16「could possibly」→「could」
※17「do grazing」→「graze」
※18「herdsmen」→「herders」
※19「theur」→「their」
※20「to they」→「to them」
※21「end up to sell」→「end up selling」

 

各ツールが校正した箇所

Trinka Grammarly Ginger Language Tool Writeful ProWriting Aid Reverso Speller Hemingway Editor
※1 x
※2 x x
※3 x x x x x
※4 x
※5 x x x
※6 x x x x x x
※7 x x x
※8 x x
※9 x x
※10 x x x x
※11 x x x x x x x
※12 x x
※13 x x x x
※14 x x
※15 x
※16 x x x x
※17 x x x x
※18 x x x x x x x
※19 x x
※20 x
※21 x x x x
校正件数 18 18 12 12 15 13 12 1
検出率 86% 86% 57% 57% 71% 62% 57% 5%

※2022年4月時点の当社調査結果。その後変動している可能性があります。

検出数にばらつきがあり、最も多くの間違いを指摘したのがTrinkaとGrammarlyで、逆にほとんど検出しなかったのがHemingway Editorでした。Hemingway Editorは英文校正ツールではなくエディターであるため、冗長な言い回しについての指摘にとどまっています。その他のツールでは単純なスペルミスなどはほとんどを検出しますが、主語と動詞が離れた文での主語・動詞の不一致などについて、検出が難しくなる傾向もあるようです。また、Chairman→Chairpersonのように性別に偏向のあるような単語を中立的な表記への修正を提案していたのはTrinkaのみでした。今回の結果はあくまで、22年4月時点での各ツール無料版のテスト結果で、それぞれ機械学習を重ねるため、精度は今後も上がっていくと考えられます。

 

各英文校正ツールの強みと弱み

それでは、各英文校正ツールの特徴、強み・弱みを見ていきましょう。カジュアルな利用を想定しているなら無料版で高性能なものを。フォーマルユース、ヘビーユーザーなら、有償版を選んでも、その価値があるかもしれません。

Trinka

英文チェックツールTrinkaは、文脈に沿ったスペルチェックや高度な文法ミスの修正、リアルタイムでの修正案の提案などを行います。有償版の「プレミアムプラン」は1年分一括支払いの場合月額927円ですが、ベーシック版は毎月1万単語まで無料で利用可能で有償版と同じ校正精度です。Wordファイルの自動校正やブラウザプラグイン、単語登録できるマイ・ディクショナリー機能、学術誌への掲載が可能なレベルであるかを判別する出版適正チェックなどの機能も無料版で利用できます。200万人を超える世界の研究者の英語論文を校正してきた研究支援エナゴのノウハウを詰め込んで開発されたTrinkaは、高い精度での英文校正が可能なだけでなく、英語学習者や、学生、研究者まで幅広いユーザーを想定しているため、カジュアルな英作文から、専門性の高い論文や技術文書まで使用可能です。

強み 

〇無料版は毎月1万単語まで利用可能

〇無料版でも有償版と同じ校正精度

〇高い精度のスペル・文法・句読点ミス修正

〇スペル・記号・数字表記・スペース含む用語統一チェック

〇明確さ、簡潔さ、格調、客観性、読みやすさを改善

〇原稿の分野や種類に即した最適な提案

〇学術論文の各スタイルガイドに即した語法を提案。 (AMA 11th, AGU 2017等)

〇ブラウザプラグイン(Chrome、Firefox、Edge)は無料版でも利用可

〇Wordファイルの自動校正

〇学術ジャーナル出版適正チェック

〇用語統一チェック

〇変更履歴ファイルのダウンロード

〇盗用・剽窃チェック

※有償版は利用単語数の制限がなく、Wordプラグイン機能が利用可能に。

※エンタープライズ版では、グループでの利用や、利用者のアプリ・CMS・ソフトウェアに統合可能

弱み

〇英語以外の言語に非対応

〇現時点で自動校正可能なファイルがWindows版Microsoft Wordのみ(TeXファイルに近日対応予定)

Trinkaの日本語紹介サイト
Trinkaの料金プラン
Trinkaの英文校正を無料ですぐに試せるページ


Grammarly

Grammarlyは、おそらく一般的な知名度が最も高く、利用者の多い英文チェックツールです。Trinkaと同じく最も高い検出精度を示しました。月額換算で12ドルのPremium Planでは、より高度な言い換えの提案や、ジャンルの指定、盗用・剽窃チェックが可能です。また、ブラウザへのプラグインの他、Windows PC用のアプリ、iOS版・Android版アプリのアプリもあり、様々な場面や端末で日常的に英文ライティングを行う人々に支持されています。

強み

〇精度の高い文法、スペル、句読点チェック

〇文書の自動校正

〇英語初心者にも使いやすいインターフェイス

〇学術から、ビジネス、メール、クリエイティブまで幅広いジャンルの指定が可能

〇豊富なアプリ、プラグインに対応

弱み

〇英語以外の言語に非対応

〇専門性の高い文書に不向き

〇有償版に比べると無料版の校正するポイントが制限されている

〇有償版の料金が高め

 

Ginger

同じく高い知名度を誇るのがGingerです。こちらもブラウザプラグイン、PC用のアプリ、iOS版・Android版アプリのアプリもあり、サイトも日本語化されているため、英語の学習者にとっても使いやすいツールと言えるでしょう。また、有償版のGinger校正機能プレミアムでは、テキストの読み上げ機能や学習機能がつき、自分のミスの傾向の把握にも役立ちます。

強み

〇日本語サイトでの入力・チェックが可能

〇翻訳、辞書機能、類語検索などの機能、本日のフレーズ、復習機能など英語の学習に役立つ各種機能

〇ログインなしでベーシックな機能が利用可

弱み

〇文法ミス検出の精度は限定的

〇専門性の高い文書には不向き

 

Language Tool

2003年にドイツの大学生であったDaniel Naberによって開発されたオープンソースの文法チェッカーです。インターフェイスが使いやすいことに加え、コアアプリ自体がオープンソースのため多様な言語やプラットフォームに対応して開発が進み、各種ブラウザ、ワープロソフト、メーラーへのアドインなども豊富です。しかし、言語によってミスの検出精度が異なるようで、少なくとも今回のテストでは後発の各種ツールに大きく水をあけられた感が否めません。

強み

〇プラグイン、アドオンのあるブラウザ、ワープロソフト、メーラーが豊富

弱み

〇英語のスペル・文法ミスのチェックの精度の低さ

〇言語間の精度のばらつき

〇有償版に比べると無料版の校正するポイントが制限されている

 

Writefull

AI技術を用いた学術英文専用の校閲ツールで、学術論文を通じた機械学習による文法、スペル、用語、句読点、スタイルなどのチェックをします。文書全体、段落ごとの校正の他、Trinkaと同様にWordの変更履歴付きのファイルでの校正も可能です。また、文献データベースの検索により、単語やフレーズがどのような文脈でどのように使われているかも分かるほか、文章のパラフレーズ、タイトル自動生成機能など、英語での論文執筆に特化した機能が豊富です。しかし、今回のテストではミスの検出精度自体はそれほど高くありませんでした。

強み

〇学術論文執筆に特化した各種機能

〇豊富なデータベースの参照  

弱み

〇文法・スペルチェックの精度の低さ

〇無料版はチェック件数上限あり

 

ProWritingAid

名前の通り、プロの書き手が編集者に送る前の原稿の改善するためのツールとして開発されている英文チェッカーで、文体や文構造のチェックと改善の提案をしてくれます。たとえば、同じ主語で始まる文のくり返しや、同じ単語の頻出など、文法的には間違っていないものの稚拙な印象ある文章を改める上で有効で、実際に多くのライター、書き手が活用しているとされます。月額換算で6.58ドルのPremium Membershipでは、文字数制限もなくなり、Wordへのアドインも利用可能になります。

強み

〇アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語、カナダ英語を選択可

〇一般文書から学術、技術、ウェブ記事、脚本までの文書タイプを選択可

〇英語の文体チェックが可能

弱み

〇無料版はない

〇ミスの検出精度が低い

〇英語ネイティブのライティング支援がメイン


Reverso Speller

フランスのIT企業Reversoが提供する、オンライン英文校正・添削ツール。長年にわたり、オンラインの翻訳ツールや言語ツールを提供してきたため、ユーザー数は少なくありませんが、Gingerのチェックツールを使用した英文校正・添削の精度は校正・添削に特化した他のツールに比べると低いという評価が散見します。校正可能な文字数は、無料プラン600文字、月額換算5.99ドルのプレミアムプランでは2,000文字までと、ボリュームの大きな文書の校正にも不向きでしょう。フランス企業のサービスであるため、フランス語の校正・添削が可能な他、日本語(ベータ版)を含む各国語どうしの翻訳なども同じサイトで行えることも特色です。

強み

〇フランス語の文法チェックあり

〇15か国語以上の随意ペアで翻訳が可能

〇英語の類語関連語辞典あり

弱み

〇英文添削の精度は、TrinkaやGrammarlyと比べるとそれほど高くない

〇学術分野、テクニカル系の文書には不向き


Hemingway Editor

読みにくい文や冗長な文がハイライトされ、見出しと本文、箇条書きといった階層や、イタリック、太字などを調整しながらライティングができるため、文書のスタイルを調整しながらわかりやすい英文を書く必要がある場面では重宝するでしょう。ただし、あくまで英文エディターであるため、英文校正ツールとしての機能は極めて限定的です。

強み

〇スタイルを調整しながら英文でのライティングが可能

〇読みにくい文、冗長な文の色分けによる明示

弱み

〇英文添削の精度は高くない

〇学術分野、テクニカル系の文書には不向き

 

各ツールの機能の比較表は以下の通りです。

Trinka Grammarly Ginger Language Tool Writefull Prowriting Aid Reverso Speller Hemingway Editor
有償版月額(年払いの場合) 927円 $12.00 $7.49 $4.92 $5.46 $6.58 $5.99 $19.99
Features
スタイルガイドへの準拠

(APA、AMAをはじめとした各種ガイドに即した語法)

× × × × × × ×
専門分野に合わせた用語・語法

(医学、ライフサイエンス、工学など、分野に合わせた修正を提案)

× × × × × × ×
専門用語のスペル

(分野に合わせたスペルを提案)

× × × × × ×
専門的な言い回し

(その分野で使われる用語、フレーズを提案)

× × × × × × ×
あいまいな表現の明確化

(分かりやすく明確な英文に修正)

× × × × × ×
出版適正チェック

(論文受理の可能性を高める20以上のチェックポイントで査定)

× × × × × × ×
ファイル自動校正

(Wordファイルでアップロードすれば、数分で自動校正が完了)

× × × × × ×
学術的な文体

(口語体、フォーマルでない表現や単語の修正))

短縮形、人称代名詞、受動態の用法などのみ × × × × ×
単語数削減

(より簡潔で説得力のある文章を提案)

複合前置詞や冗長な言い回しなどのみを修正 × × × ×
適切な表現

(意図しない不適切な言葉遣いや偏向のある表現の修正)

社会的少数者を包摂する言葉遣いなどを修正 × × × × × ×
用語統一チェック

(ダッシュなどの記号、スペル、数値の表記法など細かい点もチェック)

× × × × ×
変更提案の一括承認/すべて無視、いずれも可能

(修正案の一括反映/すべて無視もワンクリックで完了)

× × × × ×
高度な文法チェック × ×
文構造の修正 × ×
より良い単語の提案 × ×
アメリカ英語/イギリス英語の選択 × ×
細やかな説明とヒント ×
辞書機能のカスタマイズ × × ×
オンライン校正 ×
ブラウザプラグイン × × ×
Wordプラグイン × ×

 

まとめ

オンラインの英文校正ツールをうまく活用すれば、英語を第一言語としない人も、より気軽に正確な英文を効率的に書けるようになります。オンラインで利用可能な英文校正ツールは、それぞれ独自のアルゴリズムを使用しており検出する文法・スペルミスや修正提案もまちまちです。インターフェイスの設計、アプリケーションの有無、ブラウザやMicrosoft Office系のソフトへのアドインの有無など、使いやすさや料金体系も加味して、自分に合ったツールを活用すれば英作文のストレスが劇的に少なくなるでしょう。