学術論文における「et al.」の使い方

論文の引用で使われる 「et al.」の意味や使い方について疑問を持ったことはありますか?

「etc.」、「et al.」、「e.g.」、「i.e.」、「ibid.」など、ラテン語の略語は学術論文でよく目にしますが、それぞれの意味や、どこでどのように使えば良いのかは正しく把握しておきたいものです。この記事では、正しい使い方と誤用の例などを取り上げ、「et al.」の意味やいつどこで使うべきかなどを解説します。

「et al.」の読み方と意味

「et al.」という略語は、学術的な文章で用いられる多くの略語と同じくラテン語です。英語の「and others(およびその他)」という意味合いの「et alii」(男性複数)、「et aliae」(女性複数)、「et alia」(中性複数)の共通の省略形で、省略されたことを表すドットが「al」の後に付けられます。引用文献の著者の数が多い場合に頻繁に使用されます。英語圏での発音は「et ǽl」で、「エトアル」、「エタル」、「エトアール」などのカタカナ表記が近いでしょう。

「et al.」と混同されやすいのが、同じくラテン語の略語である「etc.」です。「etc.」は「et cetera」の省略形で、こちらも日本語にすると「およびその他」という意味になります。しかし、英文に「et al.」と「etc.」を用いる際、両者は簡単なルールで明確に使い分けられます。「et al.」が人に対して使われるのに対し、「etc.」は物や動物に対して使われるのです。例えば、“Jinkyung et al. went to the grocery store to buy ice cream, cookies, etc. (ジンギョンらはアイスクリームやクッキーなどを買いに食料品店に行きました。)”などです。ここでの「et al.」はジンギョン以外にも人がいることを表し、「etc.」はアイスクリームやクッキー以外にも買ったものがあることを表しています。「etc.」はフォーマルな文章にもそうでない文章にも使われますが、「et al.」が英文で使われるのは、一般にフォーマルな学術文書に限られます。

また、あまり知られていませんが、「et al.」は 「et alibi」の略語として使われることもあります。「et alibi 」は「and elsewhere(などの場所)」という意味です。アカデミックな文章では、明示された場所以外の場所があることを示すのに使われます。例えば、”Magpies of the genus Pica are found in temperate regions of Europe, Asia, et alibi.(カササギ属はヨーロッパ、アジアなどの温帯地域に生息する。)”などの使い方です。しかし、「et al.」のこのような使われ方は稀なため、ここでは、「およびその他(の人々)」の意味合いの「et al.」について解説します。

APAスタイルの論文での引用の際の「et al.」の使い方

著者が何人から使うかなど「et al.」の使い方は、論文のスタイルガイドごとに少しずつ異なります。

APA第7版では、参考文献の著者が1人または2人の場合、本文中の引用箇所にすべての著者の名前を表記しなければなりません。例えば、MacKenzieとYunによる2019年の論文は本文中では次のように記載されます。

(MacKenzie & Yun, 2019)

文献の著者が3人以上の場合、省略によって混乱が生じる場合を除き、本文中では筆頭著者名の後に「et al.」を使用します。MacKenzie、Yun、Washingtonの3名による2019年の論文は、次のように記載されます。

(MacKenzie et al., 2019)

参考文献セクションでは、著者が20名を超えない限りすべての著者名を「Surname(姓)」→「,(コンマ)」→「ファーストネームのイニシアル」→「.(ドット)」の順で記載します。著者名と著者名の間にも「,()」コンマを入れます。21人以上の場合は19人目までの名前を同様の書き方で記載し、「…(省略符号)」を入れて最後の著者名を同じ要領で記載します

MLAスタイルの論文での引用の際の「et al.」の使い方

APAスタイルと同様、MLAスタイルでも本文中に文献情報を表示します。APAスタイルと同様に、著者が3人以上の場合は「et al.」を使用します。ただし、APAスタイルでの引用とは異なり、MLAスタイルでは、著者が3人以上の場合、参考文献セクションでも「et al.」を使用します。

MLAスタイルでも、MacKenzieとYunによる2019年の論文の引用は本文中で次のように記載されます。

(MacKenzie & Yun, 2019)

同じくMLAスタイルで、MacKenzie、Yun、Washingtonの3名による2019年の論文を引用したとすれば、本文中で記載は次のとおりです。

(MacKenzie et al. 2019)

このように、本文中の「et al.」の使用ルールに関しては、APAとMLAのスタイルで違いはありません。

ただし上述のとおり、MLAスタイルでは、参考文献セクションでも「et al.」を使います。

参考文献が書籍の場合、

MacKenzie, Lilac, et al. [Title], [Publisher], 2019. [Page#]

※ご参考までに

[Title]の部分に書名が斜体で、[Publisher]の部分には出版社名、[Page#]には参照箇所のページ(pp20-28など)が入ります。

参考文献がオンラインジャーナル掲載の論文であれば、

MacKenzie, Lilac, et al. “Article Title.” Journal Name, vol. [Volume#]. no. [Issue#], [Month Year], [Page#]. [DOI](URL.)

という表示になります。論文タイトルをダブルクォーテーションで囲い、ジャーナル名を斜体で表記し、[Volume#]に巻数、[Issue#]に号数、[Month Year]に発行年月、[Page#]に参照箇所のページ、[DOI]にDOI(デジタルオブジェクト識別子=なければURL)を入れます。

シカゴスタイルの論文での引用の際の「et al.」の使い方

シカゴスタイルの論文での書誌情報の提示方法は2つのやり方があります。1つ目が、本文中では著者名(姓)と発行年のみを丸カッコでくくって記載し、参考文献セクションにおいて著者名順(同じ著者の場合出版年順)に書誌の詳細情報を記載する「著者-出版年方式(Author-Date)」で、2つ目が、文献の情報を本文下部の脚注として記し引用順に番号を振って論文の最後の参考文献リスト欄で引用順に文献を列挙する「脚注方式(Footnote)」です。「et al.」の使い方は、いずれの引用方式でも変わりません。

シカゴスタイルでは、著者が4人以上の場合のみ筆頭著者の名前を書き、続いて「et al.」と書きます。

MacKenzie、Yun、Washingtonの3人による2019年の論文を引用する場合、

「著者-出版年方式(Author-Date)」での本文中での表記は、

(MacKenzie, Yun, and Washington, 2019,[Page#])

のようになります。

「脚注方式(Footnote)」で、脚注欄に情報を記載する際は、3人全ての姓名を記述し、

Lilac MacKenzie, Ling Yun, and Rebecca Washington, [Title]([Place Published]: [Publisher], 2019),[ Page#]

となります。

[Title]の部分には論文タイトルが斜体で、[Place Published]の部分には出版地(New Yorkなど)、[Publisher]の部分には出版社名、[Page#]には引用箇所のページ番号が入ります。

同じ文献からの2度目以降の場合、著者の姓、文献タイトル、ページで構成される短縮形の脚注(Shortened notes)が使われます。「ibid.(同前)」や「op. cit.(前掲書)」で、タイトルや出版社名に変えることもできますが、『The 17th edition of the Chicago Manual of Style(シカゴ・マニュアル・オブ・スタイル17版)』ではibid.の使用は推奨されていません

MacKenzie、Barber、Yun、Washingtonの4人による2019年の論文を引用する場合、

「著者-出版年方式(Author-Date)」での本文中での表記は、

(MacKenzie et al., 2019,[Page#])

のようになります。

「脚注方式(Footnote)」で、脚注欄に情報を記載する際は、筆頭著者の姓名(名・姓の順)と「et al.」と記します。引用文献が書籍の場合、

Lilac MacKenzie et al., [Title] ([Place Published]: [Publisher], 2019), [Page#]

となります。

文献リストのセクションでは、著者が10 名までの出典は、すべての著者名を記載します。最初の著者のみ「Surname(姓)」→「,(カンマ)」→「First Name(名)」の順で記載し、二人目以降は「名姓」の順に半角スペースを空けて記載(=一般的な英語の人名表記)し、著者名と著者名の間をカンマで区切ります。著者が10 名を超える場合は、最初の 7 名の姓名に続けて「et al.」 と記載します。この場合も最初の著者のみ「姓名」の順、2人目以降は「名姓」の順です。

著者10人以下の場合: 例えば、MacKenzie、Barber、 Yun、Washington、Ryan、Jacobson、Grant、Rucker、Sohn、Lingの10名の著者による文献の場合は、文献リストのセクションで全員の著者名を明記します。

引用文献が書籍の場合、

MacKenzie, Lilac, Ling Yun, Rebecca Washington, Paul Ryan, Peter Jacobson, Richard Grant, Marin Rucker, Sonja Sohn, and Gilbert Ling, [Title], [Place Published]: [Publisher], 2019

のようになります。

著者11人以上の場合:例えば、MacKenzie、Barber、 Yun、Washington、Ryan、Jacobson、Grant、Rucker、Sohn、Ling、Leeが著者の場合、参考文献リストの欄では最初の7人の名前のみを明記し、その後に「et al.」と加えます。

MacKenzie, Lilac, Ling Yun, Rebecca Washington, Paul Ryan, Peter Jacobson, Richard Grant, et al. [Title], [Place Published]: [Publisher], 2019

などです。

よくある間違い

引用スタイル以外で「et al.」の使用で最もよくある間違いは句読点です。「et al.」の 「al」の後にドットがあり、カンマが必要な際にはその後に付けます。「et」の後にはドットはありません。

et al

et. al.

誤:et. al

et al.

「et al.」を始めとした学術用語が正しく使えているか不安な場合には、AI搭載の学術英語に特化した校正ツールを利用するのも良いでしょう。AIが急速に進歩を遂げる今、そうしたツールを上手く取り入れることで、効率的・効果的な学術英語の執筆が可能になるでしょう。

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